(これ以降もフィクションです。)

★淡い想い出(2)★

主な登場人物

☆少女(この話の主人公)
☆中国人の羽田「はだ」兄弟 (兄:信和「のぶかず」 弟:信行「のぶゆき」)

「エピソード:その2」

その後も、兄、信和の意味不明な追跡は続いた。
弟の信行は、それをいつも黙って眺めているだけだった。
少女が小学6年も終りに近づいた頃には、既にその光景は少女にとって当たり前なことのように感じていた。

地元では選択出来ない、たった一つの中学に進学した少女は、なおも続く「イジメ」に戸惑いを感じつつも、いつしか信和への淡い恋心を抱くようになった。
しかしそんなことはおくびにも出せず、ただ見ているだけで十分だった。
信和は中学2年。いつも同級の女の子達に囲まれていた。
少女が入り込める場所などどこにもなく、当たり前だった「謎の追跡」もなくなりつつあった。
それでも、少女は毎日信和の姿を見られるだけで幸せだった。
話しかけることも、一緒に遊ぶことも出来なくても、それでよかった。
進学と共に、剣道部に入った少女は毎日練習に明け暮れるようになった。

いつものように剣道部の夜間稽古が終り、辺りは真っ暗だった。
いつもは夜遅くなると、安全な道(遠回り)で帰宅していたが、その日はどうしても見たいテレビがあった。
意を決して近道で帰ろうと途中まで来た所で、2人組の痴漢に遭遇してしまった。
その痴漢は信和と同じ、1学年上の先輩達。
そう、少女が部活を終えてその道を通ることを知っていたのである。
近くの廃棄工場のような場所に連れこまれ、危うく・・・という所に、偶然信和が通りかかったのである。
信和は、少女の特徴のある自転車に見覚えがあった。
いつも、追跡していたからだ。
道端に倒れている自転車を見て、すぐに探してくれたのである。

難を逃れたとはいえ、あられもない姿の少女。
純情だった少女は、ことの他初恋の信和にそんな姿を見られたことに多大なショックを受けていた。
帰りの道中、「ありがとう」の一言も発せぬまま、無言の帰宅となった。

ある日、いつものように学校に行くと、弟の信行の姿が見当たらなかった。
風邪でもひいたのだろうと気にもせずにいると、次の日も来なかった。
少女はその日、学校から帰ってもどこにも行かず、家の窓からずっと4階にいるはずの彼等を見ていた。
しかし、その後、姿一つも見かけることはなかった。
一言もなく、ひっそりと引越していったようであった。
信和に「ありがとう」の一言は、永遠に言えないまま・・・。

「エピソード:その3に続く」

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