(これ以降はフィクションです。)

★淡い想い出(1)★

主な登場人物

☆少女(この話の主人公)
☆中国人の羽田「はだ」兄弟 (兄:信和「のぶかず」 弟:信行「のぶゆき」)
☆中国人の優しいお姉さん
☆担任の先生(フィクサー)

「エピソード:その1」

とある寂れた田舎に、少女が引越してきた。
少女はまだ幼稚園生。
この先、何が起きていくのか知らない少女の胸は、期待と不安で入り混じっていた。
そこは極めて片田舎なため、進める幼稚園や学校は一つしか選択がなかった。 少女は難なくみんなに馴染み、普通の幼稚園生活を送り、無事小学校へと進学することになった。
真新しいランドセルを背負い、近所の上級生達に連れられての初めての登校。
勉強やみんなとの交流に、少女は困ることはなかった。
しかし少女には、一つだけ不得意なものがあった。
それは「食べるのが人より遅い」こと。
給食の時間は限られている。給食の時間が終わると一斉に掃除の時間。
少女はいつも掃除の時間になっても食べていた。
学校生活が始まって、1年が経とうとしたある日。
クラスで1番人気の男の子が、そんな少女に目を留めた。
そう、「イジメ」の始まりだった。
少女が受けた「イジメ」の類は、一般的に知られているものばかり。
とりたてて、変わったものではなかったのかもしれない。
しかし、少女にとっては地獄以外の何物でもなかった。
まず少女は考えた。担任の先生に相談してみようと。
それが更なる悪夢の始まりでもあった。フィクサー(黒幕)は担任だったからである。
ノートは破られ、体操服には落書きされ、靴は隠され・・・・でも少女は諦めなかった。
何をされても泣かず、反論もせず、両親にも言わず、じっと耐え続けたのである。

小学5年になったある日、少女の家の前に県営住宅が出来た。4階建ての大きな住宅。
その住宅の住民は、ほとんどが中国からの帰国者達だった。
中には何人かの子供達が日本語を話せたけれど、話せない人の方が多かった。
そこで学校が考えたのは、少女に中国語(北京語)を覚えて貰うことだった。
地獄の毎日が、その日を境に一変した。
イジメは無くならなかったけれど、少女には中国語を覚えるという生きがいが出来た。
学校から帰って来ると、3階に住む、優しいお姉さんの家にいつも直行した。
唯一日本語を話せるそのお姉さんに、徹底的に教えて貰ったのである。
ある程度まで話せるようになった少女は、学校内での通訳の役を荷うようになった。

その日も、学校から帰るといつものように3階に住むお姉さんの家に向かった。
でもその日は何かが違った。
3階にたどり着く前に、立ちはだかる大きな影があった。
その住宅の4階に住む、羽田兄弟の姿だった。
兄は少女より1学年上、弟は同級生だった。
少女は思った。きっといつも学校でイジメられている自分の姿を見て、便乗しようとしているのではないかと。
その場で叫ぶことも考えた。逃げ出すことも考えた。
しかし、何も出来なかったのである。
しばらくすると、少女には分からない中国語を叫んで、何もせずに階段を降りていった。

その日から、羽田兄弟が少女を気にするようになった。
好きとか嫌いとか、そんなものではなかった。
唯一、意思の疎通が図れる、友人と見なしたようだった。
学校から帰って来て、少女が自転車で出掛けると、決まってついてきた。
いつも、何も言わずに・・・。
そして少女が目的の場所にたどり着くと、黙って帰って行くのである。
兄弟が一緒にいることはあまりなく、主について来るのは兄の信和だけになった。
少女を見守っていたのか、何の根拠や理由があったのかは永遠に不明のまま・・・。

「エピソード:その2に続く」

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